当院では、この論文を参考に以下の記事を作成しています。
女性の薄毛治療(FAGA)を安全に提供しているクリニックの情報を公開しているので、治療を検討している方は是非ご覧ください。
女性型脱毛症(FAGA)における側頭部脱毛と他の頭皮部位の関係性
女性のFAGA(女性型脱毛症)は、中央部の頭皮に影響を与え、前頭部の生え際は残ることが多いです。
FAGAは思春期以降に発症し、髪の毛が細く短くなることで徐々に進行します。
中央部の頭皮が目立つようになり、特に頭頂部の毛髪が薄くなります。
しかし、最近の研究では、側頭部も女性型脱毛症の影響を受けることが確認されており、FAGA(女性型脱毛症)の評価において重要な要素となる可能性が示唆されています。
しかし、FAGA(女性型脱毛症)の従来の分類法であるBASP分類(脱毛症の評価方法の1つ)は前頭部と頭頂部の脱毛を中心に評価しているため、側頭部の脱毛を適切に評価する仕組みがありませんでした。
このため、側頭部の脱毛の程度を正確に評価し、FAGA(女性型脱毛症)の診断と治療に役立つ新しい分類法が必要である可能性があります。
本研究では、FAGA(女性型脱毛症)患者の側頭部の脱毛の程度と他の頭皮部位(前頭部・頭頂部・後頭部)の毛髪密度および太さとの相関関係を調査していました。
韓国のFAGA(女性型脱毛症)患者109人を対象にフォトトリコグラムを用いて詳細な分析を行い、側頭部の脱毛の重要性を明らかにするとともに、新たなBASP分類に側頭部の評価を追加する必要性を考えています。
本研究は、FAGA(女性型脱毛症)における側頭部の脱毛が他の頭皮部位とどのような関連性・相関があるのか明らかにすることを目的としており、これにより診断と治療の精度を向上させることを目指しています。
FAGA(女性型脱毛症)の側頭部脱毛に関する研究目的・方法
FAGA(女性型脱毛症)の側頭部脱毛に関する研究の目的
本研究の目的は、FAGA(女性型脱毛症)の患者における側頭部の脱毛の程度を詳細に評価し、それが他の頭皮部位(前頭部・頭頂部・後頭部)とどのように相関するかを明らかにすることです。
従来のFAGA評価方法では、中央部の頭皮に重点を置いていましたが、側頭部の脱毛がFAGAの診断と治療において重要な要素であることを明示するための新しいデータが発見されることを目的としています。
FAGA(女性型脱毛症)の側頭部脱毛に関する研究デザイン
本研究は、韓国における単一の大学病院で行われた後ろ向き観察研究(過去に収集されたデータを基にして行う研究方法)です。
複数の病院でのデータを統合せず、1つの病院からのデータを用いて分析を行ったことで、データの一貫性と収集の質を高めることができています。
対象者は、診断を受けたFAGA患者であり、以下の基準を満たす女性109人です。
FAGA(女性型脱毛症)の研究対象者の選定基準
- 年齢:15歳から64歳までの女性。
- 診断基準:FAGA(女性型脱毛症)の診断を受けていること。
- 除外基準:他の種類の脱毛症を有する患者・過去6か月以内に脱毛症の治療を受けた患者・鉄欠乏性貧血・甲状腺疾患・他の自己免疫疾患・栄養失調(ビタミンD欠乏症を除く)などを有する患者。
FAGA(女性型脱毛症)の研究対象者の症状の測定方法
頭皮部位の選定と定義は以下になります。
- 前頭部(Frontal):前頭部の生え際中央から3cm上の位置。
- 頭頂部(Vertex):左右の外耳孔を結ぶ仮想線の中央。
- 後頭部(Occipital):後頭部の中心水平線上の中央。
- 側頭部(Temporal):外耳孔の上6cmの位置で、左右両側を評価。
測定方法① フォトトリコグラムの使用
- 頭皮の各部位の毛髪密度(cm²あたりの毛髪本数)と毛髪の太さ(ミクロン単位)を測定。
- 測定は50倍および100倍の拡大率で行い、専用のソフトウェア(Folliscope®; LeedM, Seoul, South Korea)を使用して分析。
測定方法② 写真撮影とデジタル画像分析
- デジタルカメラを使用し、標準化された6つの視点から写真を撮影。
- フォトトリコグラムにより、各頭皮部位の毛髪の密度と太さを計測。
測定方法③ BASP分類の改訂
- 従来のBASP分類は前頭部と頭頂部の脱毛に焦点を当てていますが、本研究では側頭部と後頭部の脱毛評価を追加。
- 側頭部の脱毛程度をT(Temporal)として、T0(正常)からT3(重度の脱毛)までの4段階で評価。
FAGA(女性型脱毛症)の研究対象者に関するデータの統計分析
- データの分析はSPSSソフトウェア(バージョン20.0)を使用。
- 各頭皮部位の毛髪密度と太さの違いを比較するために、マン・ホイットニーU検定およびスチューデントのt検定を使用。
- 頭皮部位間の相関関係を評価するために、ピアソンの相関係数を使用。
- 統計的有意性はP < 0.05と定義。
FAGA(女性型脱毛症)の研究対象者の倫理的配慮
- 本研究はInHa大学病院の倫理委員会によって承認されました(承認番号:INHAUH2019-02-008)。
- 後ろ向きデザインのため、インフォームド・コンセントは免除されました。
女性型脱毛症(FAGA)における側頭部脱毛と他の頭皮部位の関係性の調査結果
本研究の結果、109人のFAGA(女性型脱毛症)患者のうち89人に側頭部の脱毛が確認されました。以下は、各頭皮部位における毛髪密度と太さのデータおよび相関関係の結果です。
毛髪密度と太さの詳細データ
毛髪密度(太い髪) (hairs/cm²)
※n=1の場合は1人の患者からのデータであることを示しています
頭皮部位 | グレード 0 (正常) | グレード 1 (軽度) | グレード 2 (中等度) | グレード 3 (重度) |
---|---|---|---|---|
前頭部 (hairs/cm²) | 131.6 ± 28.2 | 108.0 ± 23.2** | 63.0 ± 25.5** | 51.0 (n = 1) |
頭頂部 (hairs/cm²) | 123.5 ± 39.0 | 115.5 ± 25.7 | 99.5 ± 34.7 | – |
側頭部 (hairs/cm²) | 92.5 ± 19.7 | 75.1 ± 19.7** | 63.0 ± 16.8** | 46.6 ± 22.4** |
後頭部 (hairs/cm²) | 120.5 ± 22.4 | 99.1 ± 35.2** | – | – |
毛髪密度(全体) (hairs/cm²)
※n=1の場合は1人の患者からのデータであることを示しています
頭皮部位 | グレード 0 (正常) | グレード 1 (軽度) | グレード 2 (中等度) | グレード 3 (重度) |
---|---|---|---|---|
前頭部 (hairs/cm²) | 141.9 ± 29.5 | 133.6 ± 24.1** | 104.0 ± 30.8** | 86.0 (n = 1) |
頭頂部 (hairs/cm²) | 143.3 ± 38.2 | 137.0 ± 26.2 | 130.3 ± 39.5 | – |
側頭部 (hairs/cm²) | 103.1 ± 21.6 | 88.5 ± 20.4** | 82.5 ± 20.4** | 64.3 ± 27.9** |
後頭部 (hairs/cm²) | 136.4 ± 22.0 | 123.0 ± 37.6** | – | – |
毛髪の太さ (μm)
※n=1の場合は1人の患者からのデータであることを示しています
頭皮部位 | グレード 0 (正常) | グレード 1 (軽度) | グレード 2 (中等度) | グレード 3 (重度) |
---|---|---|---|---|
前頭部 (μm) | 83.3 ± 10.6 | 73.4 ± 10.8* | 72.1 ± 10.7* | 81.0 (n = 1) |
頭頂部 (μm) | 76.6 ± 9.3 | 78.5 ± 10.3 | 74.0 ± 10.4 | – |
側頭部 (μm) | 83.9 ± 11.2 | 79.7 ± 7.5 | 76.7 ± 10.6* | 66.9 ± 6.6** |
後頭部 (μm) | 77.7 ± 9.7 | 78.5 ± 9.3 | – | – |
注記:
- グレード0は正常な毛髪状態を示します。
- グレード1は軽度の脱毛・グレード2は中等度の脱毛・グレード3は重度の脱毛を示します。
- *P < 0.05、**P < 0.01は、統計的に有意な差があることを示します。
女性型脱毛症(FAGA)における側頭部脱毛と他の頭皮部位の相関関係
前頭部の毛髪密度および太さは、頭頂部、側頭部、後頭部の順に強く相関していました。
特に、前頭部の毛髪の太さは側頭部の毛髪の太さとより強く関連していました。
相関係数
- 前頭部と頭頂部の毛髪密度:0.742
- 前頭部と側頭部の毛髪密度:0.604
- 前頭部と後頭部の毛髪密度:0.522
- 前頭部と側頭部の毛髪の太さ:0.560
このデータは、側頭部の脱毛がFAGA(女性型脱毛症)において重要な要素であり、前頭部の脱毛と強く関連していることを示しています。
側頭部の脱毛を含めた新しいBASP分類の必要性が十分にあると考えられます。
女性型脱毛症(FAGA)における側頭部の脱毛の重要性
本研究によりFAGA(女性型脱毛症)患者の側頭部脱毛が顕著であることが明らかになりました。
具体的には、側頭部の毛髪密度が他の頭皮部位に比べて最も低く、脱毛の進行度が高いことが確認されました。
本研究の結論
本研究は、FAGA(女性型脱毛症)患者における側頭部の脱毛の重要性を明確に示すことができました。
側頭部の脱毛は、FAGA(女性型脱毛症)評価において顕著であり、前頭部の脱毛と強く関連しています。
従来のBASP分類に側頭部の評価を追加することで、FAGAの診断と治療の精度が向上すると考えられます。
具体的には、BASP分類に新しい特定タイプT(Temporal)を追加することが必要であると考えられます。
この新しい分類法により、側頭部の脱毛を含めた包括的な評価が可能となり、FAGA(女性型脱毛症)の正確な評価と治療の改善に寄与することが可能です。
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